Auguste Bonneville 作 アンティーク・フレンチ・フルートです。
BonnevilleはLotと並び称されるオールド・フレンチのフルートメーカーです。Lotと比べるとやや製作数が少なく、良いコンディションのものはなかなか市場に出回ることがありません。
今回出品している楽器はMaillechort（マイショー、マイヨショール＝洋銀）製で、リッププレートとライザーは銀製と思われます。インライン・リングキー、ブリチャルディキー、クローズドG♯キー、aisレバー、ソルダード・トーンホールといった仕様は今日一般的なハンドメイドモデルと同一で、現代の楽器から抵抗なく持ち替えが可能です。ピッチは頭部管をやや抜いた状態で442Hzでの演奏が可能です。
特筆すべきは、現代の名工の手により完全レストアがされていることです。トーンホールは注意深く再ハンダ付けが行われています。その上で、楽器全体に銀による再メッキがされています。キー・メカニズムも分解・再メッキが施された上で全タンポ、コルク、フェルトが新調されて組み立て・調整されています。それらの結果、製作当時を思わせる仕上がりの楽器──実際に見たことはありませんが──に生まれ変わっています。ケースもこの楽器に合わせて新規製作されたものです。なお、再メッキには管体内部にメッキが入り込むことにより響きが損なわれるリスクがありますが、この楽器に関してはそれは杞憂に終わっています。
現代の楽器と比較すると、例えばMuramatsuのEXモデル──これはこれで優れた楽器で十分にお勧めできるものです──と比べた場合、まろやかな中に芯のある響きや、アンブシュアの変化に機敏に反応して音色の変化が自在につけられることなど、洋銀製＝初心者用入門楽器という現代の図式にはまったくあてはまらないことが実感できます（製作当時、銀製の楽器と同一価格が設定されていたことからもそれがうかがえます）。
オールド・フレンチの楽器に興味をお持ちの方はもちろん、フルートとその音楽に真摯に向き合っているすべての方にお勧めできる製品です。